翔ちゃんは、幽霊なんて信じな、い?
エピローグ
「……真名ッ、おい真名ッ!!しっかりしろ!!!」
遠くで翔ちゃんの声がする。
そうだ、髪様が翔ちゃんの願い事を聞いてくれて……でも叶える為には私も必要だからって、私も助けてくれて。
それで?
「……翔、ちゃん?」
ぼんやりとした意識の中、目前に翔ちゃんのドアップというこの世で一番幸せな光景が広がっていた。
「真名っ!!!」
翔ちゃんの潤んだ目と目が合ったと思った瞬間、身体が痛いくらいに抱きしめられる。
(何この幸せ空間!)
「良かった。本当に良かった……!お前全然目覚さないから」
「翔ちゃん、泣いてるの?」
「泣いてねぇよ……!」
肩口の生暖かさな涙の雰囲気が、明らかな嘘だと物語っている。私もつられて泣きそうになると、急にベリっと私を引き離す。
「そうだ、お前、本当に生きてるよな?!」
そう言うなり私の頭と顔、体をぺたぺたと確かめるように触る翔ちゃん。
「?! ちょちょちょ、翔ちゃん!!!せーくーはーらー!!!」
「言ってる場合かよ!お前頭に机が当たって
出血してたはずなのに!そうだ、血が……どこにも……?」
翔ちゃんが不思議そうが辺りを見渡すが、私には髪様がやってくれたんだとすぐにわかった。
「……あれ? そういやお前なんか髪少し短くなってないか?」
「よくわかったね翔ちゃん……!?意外に私のこと見てるって事?」
「何言ってんだよ……」
そう言って翔ちゃんは慈しむように髪を撫でてくれた。
髪様に言われた事が思い出される。
『貴方は元気いっぱいで、彼の側にいるだけで良いの』
(……うん!)
「し、翔ちゃん、私ね、翔ちゃんに聞いてほしいことが……」
一世一代の告白をしようと、覚悟をした時だった。しかし翔ちゃんが急にハッとした顔をする。
「そうだ!病院行くぞ!!」
翔ちゃんが私を渋る私を無理矢理背に乗せようとする。いや、確かにおんぶしてほしいとは思ったけど、今じゃなくて良くないん!
「し、翔ちゃんちょっと待って!!」
「何だ? やっぱりどっか痛いか?」
「違うよ!! どっこも痛くない!!それどころか、髪様が髪の毛を捧げるかわりに私と翔ちゃんを助けてくれたから、すごい元気なんだよ?! だから翔ちゃんもどっこも痛くないでしょ?」
そう言うと翔ちゃんはコチラをふりかえって実に哀れそうな顔をした。
「お前……ただでさえ頭がアレなのに、頭やっぱり打ったんだな……」
「ち、ちがーう!! ほ、ほんとに.痛いとこないんだってば!!」
「いーや。そういうのは、アドレナリンが出てるから今は痛く感じねーんだよ!待ってろよ、動けないなら今救急車呼んでやるから」
「!!いや待って!わかった! わかったよ!
病院行こ!! 2人で!!だから救急車は呼ばないで〜!!」
拝啓、髪様……私の勇気はもうちょっと先になりそうです……。
でも、髪様のアドバイス通りこれからも私は変わらず翔ちゃんの側にいようと思います。
end.