似非聖女呼ばわりされたので、スローライフ満喫しながら引き篭もります
その30
「何だか、色々あったみたいだね」
横抱きにしていたオリヴィアを地面に降ろして横に立たせると、エフラムは護衛騎士やローズ達、その場にいる全員に向かって言った。
フェリクスの事やオリヴィアの羽についての事など、オリヴィアに関して逐一護衛騎士達からエフラムへと報告が行っているようで、今回様子を見に訪れたらしい。
エフラムは「君がフェリスクだね」というと、フェリクスの頭をそっと撫で、フェリクスもそのまま心地よそうにしている。
「羽も消したり、出現させたり出来るようになったんだってね」
「そうなのですエフラム様!少しだけお時間頂ければ消してみせます!…ちょっとお待ち下さいね」
そう意気込んで宣言したオリヴィアは、一旦飛ぶ練習を中断し、自室へと引き篭もるのだと言う。羽を消すには一人部屋に閉じ込もらないといけないのだ。
その間エフラムはティールームへと案内され、護衛騎士の報告を直接聞きながらお茶を飲み、オリヴィアを待つ事にした。
そうして待つ事一時間。中々オリヴィアは戻ってこない。
「まだ時間が掛かるのだろうか?」
急かしたい訳ではないが、折角ここへ来たのだからオリヴィアとの時間が無くなってしまうのは悲しい。
そんなエフラムを見て、ローズはオリヴィアの事を想像して青ざめた。
「あわわわ……また一人暗黒の妄想へと取り憑かれているのかも……」
「え……?」
「実は……あの羽が感情と連動すしている事はご存知かも知れませんが、暗い部屋の片隅で延々と自分の気分をドン底に落とすために、鬱状態になるような妄想を繰り広げているのです。それも羽が消えるまでひたすらに……」
「やはり心配だ、一旦中断させてもいいだろうか?」
「わ、分かりました…!」
ローズはエフラムの言葉に頷くと、そのまま二人でオリヴィアの部屋まで行く事にした。エフラムの肩にはフェリーも乗っている。
「お嬢様、お嬢様開けますよ?」
オリヴィアの部屋の扉をローズは声を掛けながらノックするも返事がない。
ローズはもう一度「開けますね?」と言うと、ゆっくりと扉を開き、部屋の中を覗いた。
昼過ぎにもかかわらず、部屋の中はカーテンがきっちりと閉め切られている。光が遮断された室内は薄暗かった。
しかも部屋を見渡しても長椅子や寝台にもオリヴィアの姿は無かった。エフラムとローズは互いに視線を合わせて頷くと、オリヴィアの部屋へと足を踏み入れた。
「お嬢様っ」
二人は部屋の中まで入り、辺りを見渡してオリヴィアを探した、すると窓際の隅で膝を抱えた状態で発見された。死んだ目をしながらブツブツと何かを呟いている状態で。
「い……今……ありとあらゆる悲しみにていて考えておりました……どうして人は争うのか、どうして分かり合えず戦争は無くならないのか…その行き着く先の世界の終末を想像しておりました……」
「オリヴィア!?」
オリヴィアは何か滅茶苦茶病んでいた。
そんなオリヴィアを見て、フェリクスも叫ぶ。
「世界の滅亡を延々と想像する聖女なんて、聞いたこと無いよー!」
「待ってて下さい……もう少しでドン底に落ちるような気がしますから……堕ちてみせます…」
オリヴィアがそう言った途端、エフラムはオリヴィアの体を抱きしめた。
「オリヴィアッ!もういい、充分君は頑張った…!」
「で…でも…羽を消さなくては…」
虚ろな目をするオリヴィアに向かって、エフラムはポツリポツリと語りかける。
「オリヴィア……オリヴィア実は、君がここに来てから、王都の中心街に新しくカフェが出来たんだ。それもケーキが売りのお洒落なカフェが」
「………ぇ?」
オリヴィアはエフラムの言葉に顔を上げた。
急にカフェやらケーキの話をし始めた、エフラムの魂胆は分からないが、取り敢えず気になるので話を聞く事にした。
「元王宮のパティシエが引退してオーナーをしている店だから、味や見た目の美しさは正に王宮で出されるスイーツのレベル。
それに、数々のオリジナルスイーツを多数考案して、王宮でも出していなかった新しいスイーツが食べれるとなって、今や王都の大人気店となっている」
「じゅる!」
オリヴィアは涎を抑えるのに必死だ。瞳は完全に輝きを取り戻した。
「僕はオリヴィアと行きたいんだけど、オリヴィアも行きたい?」
「い、いきた…じゅる!」
「でも……」
「じゅる?」
オリヴィアは首を傾げる。
「その羽があったら」
「!!!!!」
エフラムの言葉の意味を察したオリヴィアは、紫水晶の瞳を見開く。
「いけな………!?」
オリヴィアの瞳は再び絶望に染まっていく。
「わぁぁぁぁ羽邪魔ですー!!!羽があるとお店にご迷惑かけるから入店出来ませんー!!羽が究極に邪魔ですー!!」
オリヴィアが絶望のどん底で叫んだ瞬間、背中の羽が光の輝きと共に消えていった。
「消えた!!」
ローズとフェリクスは同時に叫んだ。
「さ、流石ですわエフラム殿下!」
ローズは歓喜に声を上げた。オリヴィアの思考と羽の性質を短期間で正確に理解し、見事背中から羽を消すことに成功した。これ以上オリヴィアが、今精神を病む妄想をしなくてもいい事に、ローズは心から安堵し、エフラムに感謝した。
そんな様子をずっと見ていたフェリクスは「僕も行きたーい!ケーキ食べに行きたーい!」と、元気に飛び跳ねていた。
横抱きにしていたオリヴィアを地面に降ろして横に立たせると、エフラムは護衛騎士やローズ達、その場にいる全員に向かって言った。
フェリクスの事やオリヴィアの羽についての事など、オリヴィアに関して逐一護衛騎士達からエフラムへと報告が行っているようで、今回様子を見に訪れたらしい。
エフラムは「君がフェリスクだね」というと、フェリクスの頭をそっと撫で、フェリクスもそのまま心地よそうにしている。
「羽も消したり、出現させたり出来るようになったんだってね」
「そうなのですエフラム様!少しだけお時間頂ければ消してみせます!…ちょっとお待ち下さいね」
そう意気込んで宣言したオリヴィアは、一旦飛ぶ練習を中断し、自室へと引き篭もるのだと言う。羽を消すには一人部屋に閉じ込もらないといけないのだ。
その間エフラムはティールームへと案内され、護衛騎士の報告を直接聞きながらお茶を飲み、オリヴィアを待つ事にした。
そうして待つ事一時間。中々オリヴィアは戻ってこない。
「まだ時間が掛かるのだろうか?」
急かしたい訳ではないが、折角ここへ来たのだからオリヴィアとの時間が無くなってしまうのは悲しい。
そんなエフラムを見て、ローズはオリヴィアの事を想像して青ざめた。
「あわわわ……また一人暗黒の妄想へと取り憑かれているのかも……」
「え……?」
「実は……あの羽が感情と連動すしている事はご存知かも知れませんが、暗い部屋の片隅で延々と自分の気分をドン底に落とすために、鬱状態になるような妄想を繰り広げているのです。それも羽が消えるまでひたすらに……」
「やはり心配だ、一旦中断させてもいいだろうか?」
「わ、分かりました…!」
ローズはエフラムの言葉に頷くと、そのまま二人でオリヴィアの部屋まで行く事にした。エフラムの肩にはフェリーも乗っている。
「お嬢様、お嬢様開けますよ?」
オリヴィアの部屋の扉をローズは声を掛けながらノックするも返事がない。
ローズはもう一度「開けますね?」と言うと、ゆっくりと扉を開き、部屋の中を覗いた。
昼過ぎにもかかわらず、部屋の中はカーテンがきっちりと閉め切られている。光が遮断された室内は薄暗かった。
しかも部屋を見渡しても長椅子や寝台にもオリヴィアの姿は無かった。エフラムとローズは互いに視線を合わせて頷くと、オリヴィアの部屋へと足を踏み入れた。
「お嬢様っ」
二人は部屋の中まで入り、辺りを見渡してオリヴィアを探した、すると窓際の隅で膝を抱えた状態で発見された。死んだ目をしながらブツブツと何かを呟いている状態で。
「い……今……ありとあらゆる悲しみにていて考えておりました……どうして人は争うのか、どうして分かり合えず戦争は無くならないのか…その行き着く先の世界の終末を想像しておりました……」
「オリヴィア!?」
オリヴィアは何か滅茶苦茶病んでいた。
そんなオリヴィアを見て、フェリクスも叫ぶ。
「世界の滅亡を延々と想像する聖女なんて、聞いたこと無いよー!」
「待ってて下さい……もう少しでドン底に落ちるような気がしますから……堕ちてみせます…」
オリヴィアがそう言った途端、エフラムはオリヴィアの体を抱きしめた。
「オリヴィアッ!もういい、充分君は頑張った…!」
「で…でも…羽を消さなくては…」
虚ろな目をするオリヴィアに向かって、エフラムはポツリポツリと語りかける。
「オリヴィア……オリヴィア実は、君がここに来てから、王都の中心街に新しくカフェが出来たんだ。それもケーキが売りのお洒落なカフェが」
「………ぇ?」
オリヴィアはエフラムの言葉に顔を上げた。
急にカフェやらケーキの話をし始めた、エフラムの魂胆は分からないが、取り敢えず気になるので話を聞く事にした。
「元王宮のパティシエが引退してオーナーをしている店だから、味や見た目の美しさは正に王宮で出されるスイーツのレベル。
それに、数々のオリジナルスイーツを多数考案して、王宮でも出していなかった新しいスイーツが食べれるとなって、今や王都の大人気店となっている」
「じゅる!」
オリヴィアは涎を抑えるのに必死だ。瞳は完全に輝きを取り戻した。
「僕はオリヴィアと行きたいんだけど、オリヴィアも行きたい?」
「い、いきた…じゅる!」
「でも……」
「じゅる?」
オリヴィアは首を傾げる。
「その羽があったら」
「!!!!!」
エフラムの言葉の意味を察したオリヴィアは、紫水晶の瞳を見開く。
「いけな………!?」
オリヴィアの瞳は再び絶望に染まっていく。
「わぁぁぁぁ羽邪魔ですー!!!羽があるとお店にご迷惑かけるから入店出来ませんー!!羽が究極に邪魔ですー!!」
オリヴィアが絶望のどん底で叫んだ瞬間、背中の羽が光の輝きと共に消えていった。
「消えた!!」
ローズとフェリクスは同時に叫んだ。
「さ、流石ですわエフラム殿下!」
ローズは歓喜に声を上げた。オリヴィアの思考と羽の性質を短期間で正確に理解し、見事背中から羽を消すことに成功した。これ以上オリヴィアが、今精神を病む妄想をしなくてもいい事に、ローズは心から安堵し、エフラムに感謝した。
そんな様子をずっと見ていたフェリクスは「僕も行きたーい!ケーキ食べに行きたーい!」と、元気に飛び跳ねていた。