君のためのウエディングドレス
 私は家ではいつでも声を出すことが出来るけれど、人の多いところでは話をすることが出来なかった。

 すごく消極的で、周りが自由に遊んでいてもどうやって動けばいいか分からなくなって、じっと辺りを見渡していた。

 保育園の時から、気がつけばいつも彼は私の近くにいて、手を差し伸べてくれて。

 色々助けてくれていた。

 桃李くんが助けてくれた中で、1番記憶に残ってるのは、小学生の時同じクラスの男子に「なんで喋らないの? 変なの」って言われた時。

 自分自身もどうしてなのか、よく分からないし。
 本当は周りのみんなみたいに、『普通』みたいに、話せたらいいなって思っていた。心の中では沢山話せるんだよって、言いたかった。

 でも何も言い返せなくて。 

 困っていたら、桃李くんが「優衣花、別に変じゃないし。じゃあ、お前はなんでそんなに歌下手なの?」ってその男子に言い返した。

「うーん。なんでだろ……」

「そんな感じ! 優衣花が喋らない分、俺が喋るから大丈夫だ!」
「なにそれ、桃李意味わかんねー」

 桃李くんのお陰で、じめっとしていた空気が一気に解けて、柔らかくて明るい雰囲気になる。

 困って身動きとれなくなった私をさりげなくその時も助けてくれていたな。

 その時じっと桃李くんを見つめていると、桃李くんは満面な笑顔でこっちをみてくれた。

 いつもキラキラしている彼だけど、その時は特にすごくキラキラしていた。

 それから、かな?
 少しだけど自然と学校で話せるようになってきたのは。多分、桃李くんのお陰。

 でも、それでも上手く話せなかったから中学の時もクラスメイトに「クールで冷たそうだね」って言われたりもした。その時も「そんなことないよ、優衣花は俺たちよりも周りをきちんと見れて、きっと俺たちよりも沢山のことを考えていて……優しいよ」って。
 
 また助けてくれた。
 何度も何度も助けてくれた。

 そんなことを色々思い出していたら、隣にいてくれるのが当たり前だと思っていたから、最近会えなくて、心がしゅんとしてきた。

 もしかして、彼女とか出来たのかな?
 そしたら桃李くんと遊べなくなっちゃう?

 想像して、もっと落ち込む。

< 6 / 16 >

この作品をシェア

pagetop