狼男な彼女
両手で鳩尾を押さえながら、力が抜けて崩れ落ちて行く体を支える為に反射的に右膝を地面に着く。

何?

殴られたの?

蹴られたの?

激痛の中で加速する混乱。

ふと顔を上げると、ぼやけた視界が捉えたのは左足を軸に無駄のない動きで流れるように回転する彼女。

神経を流れる電気信号が脳から筋肉に届くより速く、彼女は俺の右側頭部に後ろ回し蹴りを叩き込んだ。

そこで俺は意識を手放した。

少しずつ意識が戻りにつれ、徐々に視野の映し出す世界の輪郭が明確になっていく。

吐息を感じる程の近さ、目の前にあるのは、整った小さな顔。

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