狼男な彼女
髪を撫でたい。

駄目だ、死にたいのか。

寝てるし、ちょっとくらいなら。

自分の中で天使と悪魔が騒ぎ立てる。

議論が終わらないうちに、電車は目的の駅へと到着した。

止まった時の衝撃で半分くらい目を覚ました彼女が、覚醒しきっていない意識で俺に尋ねる。

「んに…着いたの?」

「着いたよ」

「じゃあ降りるの」

開いているかさえわからないほど細めた目を擦りながら彼女が答える。

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