狼男な彼女
覚束ない足取りの彼女と共に、俺は電車の中の暖かな空気に別れを告げた。

運の良い事に、俺が一人暮らししているアパートは彼女の実家から徒歩十分ほどの距離だったため、帰り道は出来る限り送っていた。

痴漢が出ても多分彼女にかかれば秒殺だろうけど、とりあえず俺にも男のプライドみたいなものが存在していて。

街灯が少なく、薄闇に染まった細い抜け道を通る俺と彼女の距離は、近すぎず遠すぎず。

肌を刺す辺りの空気は、日中はあまり感じられない冬の足音を感じさせる。

隣の彼女も、少し歩く度に、両手で小さな口を覆う様にして暖かな息を吹きかけている。

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