契約妻失格と言った俺様御曹司の溺愛が溢れて満たされました【憧れシンデレラシリーズ】
でもその期待はあっけなく裏切られた。きっかけは、同時期に始まった就職活動である。
 
奨学金の返済があり、なんとしても都内に留まりたい楓は本気だった。

就職に有利だと言われていた経理関係の資格はいくつか持っていたし、短期留学をした経験を活かして一部上場のグローバル企業に焦点を絞って活動した。

その甲斐あって三葉商船の内定を勝ち取ったわけだが、それに彼氏は難色を示した。

『彼女が、自分よりもいい会社に勤めてるなんてカッコ悪いよ』
 
そう言う彼は、中規模の外食チェーンに内定をもらっていた。

どうしてそんなことを言うのだと困惑する楓に、彼はさらに追い討ちをかけるようなことを言った。

『俺の会社、転勤も多いんだ。いずれ結婚したらついてきてもらうことになるし……。いつでも俺をサポートできるくらいの仕事がいいんじゃないかな? 三葉商船はちょっと本気すぎて……』
 
就職活動で忙しくろくに愛を育んでもいない彼氏から結婚という言葉が出たのにも驚いたが、それよりもなによりも、まるで父のような言葉を彼が口にしたことがショックだった。
 
その彼には、その場で別れを告げた。そして楓は、男性という生き物にすっかり絶望してしまったのである。

もちろん、友人や上司、同僚としての付き合いであれば問題はない。でもパートナーとして生涯をともにする気には、この先もずっとなれそうにない。

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