契約妻失格と言った俺様御曹司の溺愛が溢れて満たされました【憧れシンデレラシリーズ】
「……それは災難だったね」
 
楓の話を聞き終えて、男性が口を開いた。

「まぁでもそれは、相手が悪かったとも思うが」

「そうでしょうか?」
 
楓は口を尖らせた。

「でも結婚した友人たちも最近は会えば愚痴ばかりです。家事をしてくれないとか、口うるさい義理のお母さんからかばってくれないとか。中にはお前は嫁なんだから俺のやり方に従うのが当然だなんて言われた子もいるんですよ。どうしてそんな思いをしてまで、皆結婚するんだろう?」
 
会話の相手だって男性なのだということも忘れて、楓は頬を膨らませた。

「結婚して一緒に暮らすなら、お互いに歩み寄る必要があるのはわかります。話し合ってそうするのならいいと思います。でもたいていの男性は、女性が合わせるのが当然と思っているんです。それが私は許せない。私、絶対に結婚なんてしない」

「男が皆そうというわけではないよ」
 
男性の言葉も耳に入らなかった。

「もう私、結婚しなくても自立して楽しく生きていければそれでいいです。以前は、海外で生活をして理解のあるパートナーが見つかればと思っていた時期もあったけど、それももう無理そうだし。うちの会社は海外に支社があるけど、経理だから海外に行くことは無さそうだし」
 
最後はほとんどひとり言のようにそう言って楓はため息をつく。男性が、その言葉に反応する。

「……君は経理部なのか?」

「はい」
 
ミネラルウォーターを飲み干して頷くと、男性が頷いた。

「経理か、なるほどやりがいのある仕事だね」
 
その彼の反応を楓は少し意外に思う。楓が経理部の仕事が好きだと言うとたいていの人はきょとんとする。

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