契約妻失格と言った俺様御曹司の溺愛が溢れて満たされました【憧れシンデレラシリーズ】

「里村さん、こんばんは。こちらこそお越しくださいましてありがとうございます」

　和樹が振り返り、にこやかに答えた。

「それにしても立派な船だね。今度妻を連れて来たいよ」
　
楓は頭の中で招待客のリストを巡る。確か彼は、国内最大の旅行サイトを運営する旅行会社のＣＥＯだ。

「ええ、ぜひ」

「ははは、それにしても立派になったなぁ、和樹くん。ついに結婚したと聞いて喜んでるんだよ」

「ありがとうございます。ご挨拶が遅れまして申し訳ございません」

「いやいや、忙しいだろうし、それは仕方がない」
　
和樹が楓に向かって、ふたりの関係について説明をする。

「里村さんは父の同級生でね。昔から親しくしていただいてるんだ」
　
その言葉に、にっこりと微笑みながら頷くが、背中に緊張が走る。

彼と家族ぐるみの付き合いだと聞いたからだ。

そのような相手に、万が一にでも不審を抱かれるわけいかない。

「楓と申します。よろしくお願いします」
　
里村が、楓を見てにっこりと笑った。

「それにしても可愛いお嬢さまだ。長い間、和樹くんのお相手は誰になるかということは界隈では皆関心があった。私も心配していてね。よほど好みがうるさいのかあるいは……と思っておったが、これほどの方を望んでおったのなら納得だ。長いことどんな縁談にも頷かんかった和樹君をどうやって陥落させたのか、ぜひ今度おしえていただきたいものですな」
　
里村の大袈裟すぎるお世辞に、楓は頬を染めて答える。

「いえ、私はなにも……」

「あまりからかわないでください里村さん。彼女はあまりこのような場に慣れていないんですから」
　
和樹が助け船を出した。