契約妻失格と言った俺様御曹司の溺愛が溢れて満たされました【憧れシンデレラシリーズ】
夕暮れの街を、和樹を乗せた黒い車が抜けていく。
和樹は憂鬱な思いで流れる景色を見つめている。
まだ日が落ちてもいないのに自宅に帰らなくてはならない。それが申し訳なくてたまらなかった。
言うまでもなく、楓と顔を合わせてしまうからだ。
あの夜から二週間。
彼女の負担にならぬよう、絶対に姿を見られないようにしている。
彼女の留守か寝ているであろう時間帯に最低限の荷物を取りに帰るようにして。
だけど今夜は帰宅する必要があり自宅へ向かっている。明日からの香港出張に備えてパッキングをしなければならないからである。
もし彼女が定時退社なら、もう自宅にいるかもしれない時間帯だ。
パッキングを済ませたら、空港近くのホテルへ移動しようか……和樹が考えていると、車が信号待ちで停車する。
通りの向こうカフェのテラス席に目を留めて和樹は眉を寄せた。
楓が男と一緒にいたからだ。
息を呑み、和樹は首を伸ばして目を凝らす。
和樹がいる角度からは、楓の顔は確認できる。
が、相手の男は植栽に邪魔をされてよくわからなかった。
そのうちに、車が発進してまったく見えなくなってしまう。
車窓を睨み楓に親しくしている男などいないはずと頭の中で繰り返す。
とはいえ、本当のところ和樹は、楓のことをほとんど知らない。
知っているのは、ケーキが大好きなことと、家にいる時はお団子頭だということ、それからコーヒーを淹れられた時の無邪気な笑顔と……。
胸がギリギリと痛んだ。
結婚はしないと決めていても、恋愛をしないという意味ではない。髪型と服装をほんの少し変えただけで、見違えるほど美しくなった彼女なら、様々な誘いがあって当然だ。
まさか、あのパーティで……?
一瞬和樹は運転手に言って車を引き返させようかと思う。
とにかく相手が誰なのか確認したい。
でも口を開きかけて、考え直して口を閉じた。
和樹は憂鬱な思いで流れる景色を見つめている。
まだ日が落ちてもいないのに自宅に帰らなくてはならない。それが申し訳なくてたまらなかった。
言うまでもなく、楓と顔を合わせてしまうからだ。
あの夜から二週間。
彼女の負担にならぬよう、絶対に姿を見られないようにしている。
彼女の留守か寝ているであろう時間帯に最低限の荷物を取りに帰るようにして。
だけど今夜は帰宅する必要があり自宅へ向かっている。明日からの香港出張に備えてパッキングをしなければならないからである。
もし彼女が定時退社なら、もう自宅にいるかもしれない時間帯だ。
パッキングを済ませたら、空港近くのホテルへ移動しようか……和樹が考えていると、車が信号待ちで停車する。
通りの向こうカフェのテラス席に目を留めて和樹は眉を寄せた。
楓が男と一緒にいたからだ。
息を呑み、和樹は首を伸ばして目を凝らす。
和樹がいる角度からは、楓の顔は確認できる。
が、相手の男は植栽に邪魔をされてよくわからなかった。
そのうちに、車が発進してまったく見えなくなってしまう。
車窓を睨み楓に親しくしている男などいないはずと頭の中で繰り返す。
とはいえ、本当のところ和樹は、楓のことをほとんど知らない。
知っているのは、ケーキが大好きなことと、家にいる時はお団子頭だということ、それからコーヒーを淹れられた時の無邪気な笑顔と……。
胸がギリギリと痛んだ。
結婚はしないと決めていても、恋愛をしないという意味ではない。髪型と服装をほんの少し変えただけで、見違えるほど美しくなった彼女なら、様々な誘いがあって当然だ。
まさか、あのパーティで……?
一瞬和樹は運転手に言って車を引き返させようかと思う。
とにかく相手が誰なのか確認したい。
でも口を開きかけて、考え直して口を閉じた。