契約妻失格と言った俺様御曹司の溺愛が溢れて満たされました【憧れシンデレラシリーズ】
カフェから帰宅した楓は、鞄を自室へ持って行くことも着替えることもできずに、そのままリビングのソファへ座りぼんやりと庭を眺める。
あの夜の出来事と、彼と交わした契約、それからさっきの一ノ瀬の話が頭の中をぐるぐると回り続けている。なんだか、なにもする気になれなかった。
ガチャリと玄関のドアが開く音がしてドキリとして顔を上げる。
窓の外を見るととっぷりと日が暮れていた。
少し考えていただけのつもりだったが、いつのまにか随分時間が経っていたようだ。
玄関からの物音に楓の背中に緊張が走る。
この時間に和樹が帰ってくるのは随分と久しぶりだ。息を殺して彼を待つ。
……けれど、現れたのは予想外の人物だった。
楓は驚いて眉を寄せた。
「あら、こんばんは」
黒柳が、にっこりとした。
「どうして……勝手に……?」
あまりにも意外な展開に、掠れた声で尋ねると彼女は手の中の鍵を楓に見えるようヒラヒラとさせた。
「和樹さんからの指示よ。明日からの香港出張で必要な彼の荷物を取りにきたの。私たち今夜は空港内のホテルに泊まります。帰国は明々後日だからよろしくね」
得意そうに、歌うように彼女は言う。
『和樹さんからの指示』という言葉に、楓は目を見開いた。
「あら、奥さま。すごく驚いてるみたいだけど、彼が秘書に鍵を預けているの聞いていなかったの? ふふふ、随分秘密主義の夫婦なのね」
そう言って彼女は、馬鹿にしたように楓を見た。
「とにかく失礼するわね? 和樹さんの部屋は……」
「二階です」
慌てて楓は答える。家の中をあちこち歩き回られたら、具合が悪いからだ。楓が別棟で生活していることがバレてしまう。
黒柳が「そ」と言って階段を上がっていった。
あの夜の出来事と、彼と交わした契約、それからさっきの一ノ瀬の話が頭の中をぐるぐると回り続けている。なんだか、なにもする気になれなかった。
ガチャリと玄関のドアが開く音がしてドキリとして顔を上げる。
窓の外を見るととっぷりと日が暮れていた。
少し考えていただけのつもりだったが、いつのまにか随分時間が経っていたようだ。
玄関からの物音に楓の背中に緊張が走る。
この時間に和樹が帰ってくるのは随分と久しぶりだ。息を殺して彼を待つ。
……けれど、現れたのは予想外の人物だった。
楓は驚いて眉を寄せた。
「あら、こんばんは」
黒柳が、にっこりとした。
「どうして……勝手に……?」
あまりにも意外な展開に、掠れた声で尋ねると彼女は手の中の鍵を楓に見えるようヒラヒラとさせた。
「和樹さんからの指示よ。明日からの香港出張で必要な彼の荷物を取りにきたの。私たち今夜は空港内のホテルに泊まります。帰国は明々後日だからよろしくね」
得意そうに、歌うように彼女は言う。
『和樹さんからの指示』という言葉に、楓は目を見開いた。
「あら、奥さま。すごく驚いてるみたいだけど、彼が秘書に鍵を預けているの聞いていなかったの? ふふふ、随分秘密主義の夫婦なのね」
そう言って彼女は、馬鹿にしたように楓を見た。
「とにかく失礼するわね? 和樹さんの部屋は……」
「二階です」
慌てて楓は答える。家の中をあちこち歩き回られたら、具合が悪いからだ。楓が別棟で生活していることがバレてしまう。
黒柳が「そ」と言って階段を上がっていった。