契約妻失格と言った俺様御曹司の溺愛が溢れて満たされました【憧れシンデレラシリーズ】
彼が楓との関係を終わらせようとしているのか、それさえもわからない。

「あのパーティの夜も、あなたたち別々に過ごしたんだもの。……ね?」
 
その言葉に、楓の胸はズキンと痛む。
 
なぜそれを彼女が知っているのだろう。
 
まさかあの夜、すでに彼女と……?
 
意味深に笑う黒柳を見つめて、楓は彼女の言葉の裏を読み取ろうとするけれど、なにもわからずただ不安が増すばかりだった。
そんな楓を嘲笑うように、首を傾げて黒柳が言い放った。

「香港の夜も楽しみだわ」
 
そしてくるりと方向転換をして、玄関の方へ去って行った。
 
ドアが閉まると同時に、楓はソファに倒れ込む。
 
……もうなにも考えたくなかった。
 
人を愛するということは、こんなにもつらく苦しいものなのだ。
 
そんなことも知らないで、結婚しないなどと生意気なことを言っていた、過去の自分が恥ずかしい。結婚どころか、恋愛すら楓には無理そうだ。
 
こんなにも苦しいなら、あのBARでの出会いすら恨みたくなるくらいだった。ひとりでも大丈夫だった、あの頃の自分に戻りたい。

「くっ……! つっ……」
 
嵐の夜に、彼に抱かれて眠ったソファで、楓はひとり泣き続けた。
 
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