契約妻失格と言った俺様御曹司の溺愛が溢れて満たされました【憧れシンデレラシリーズ】
「なるほど、この場で君が森下監査役の名前を出すということは、森下監査役も君のしたことの連帯責任を負うということだな?」
 
暗に、伯父にも迷惑がかかるぞと脅しかけると、彼女は再び真っ青になり口を閉じる。そして今度こそ部屋を出ていった。
 
ため息をついて、和樹は再び荷造りに取りかかる。黒柳への怒りが半分八つあたりみたいなものだ、ということはわかっている。
 
楓が契約終了を言い出したのは、黒柳のことがきっかけにはなったかもしれないが、一番の原因は和樹にある。
 
この契約はどちらかがやめたいと言った時に終了する約束だ。ならば予定を早めて今から帰ることにはなんの意味もない。
 
――それでも。
 
彼女にそばにいてほしいという想いを抑えることができなかった。
 
――愛してる。
 
この想いを、どうしても伝えたい。
 
和樹にとって生まれてはじめての感情を、どうしても聞いてほしかった。
 
全身全霊をかけて愛を乞う。
 
そうせずにはいられないという強い衝動に突き動かされていた。
 
窓の外の青い空に視線を送り、楓の綺麗な瞳を思い浮かべて、和樹はスーツケースをパタンと閉じた。

< 159 / 175 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop