契約妻失格と言った俺様御曹司の溺愛が溢れて満たされました【憧れシンデレラシリーズ】
その彼に答えなくてはと思うのに、うまく言葉が出てこなかった。熱い雫が頬を伝う。

「楓……?」
 
その雫がぽたりと彼の手に落ちた時、楓は声を絞り出す。

「わ、私も……」

その言葉に、和樹が目を見開いた。

「私も……。和樹さんを、あ、愛してる。愛してしまったの……」

「楓……‼︎」
 
和樹が立ち上がり楓を抱きしめた。
 
彼の胸に顔を埋めて楓は止まらない涙と、言葉を吐き出していく。

「こ、怖かった。好きになっちゃいけないのに、こんなこと迷惑でしかないのに、どうしても止められなくて……! だから一緒にいるのが、つ、つらくなってしまったの……! そばにいて夫婦みたいなふりをしても、絶対に愛されることはないんだって思ったら……いずれは、ひとりになってしまうって考えたら、怖くて……だから……!」

「不安にさせて悪かった。俺も同じだ。君に負担をかけると思ったら、言えなかった。もう大丈夫だ。君はひとりにはならない。一生俺のそばにいて、俺に愛されるんだから」
 
熱い言葉と自分を抱く強い力に、楓はしがみついて泣き続けた。
 
この瞬間に、ひとりで生きていくと決めていた過去の自分は消えてしまった。もう彼なしには生きられない。

「楓」
 
名前を呼ばれて顔を上げると、そこにある綺麗な彼の瞳。

大好きなこの瞳が、今は自分だけを映しているということに、楓の胸は幸せな想いでいっぱいになっていく。

「あの夜のやり直しをさせてくれ」
 
その彼の言葉の意味をよく理解できないままに熱く唇が奪われた。
 
心が通じたはじめてのキスは少ししょっぱい涙の味。

でも熱い想いを混ぜ合ううちにすぐに甘くなってゆく。
 
愛してると彼の吐息が言っている。やり方もわからないままに、楓もそれに一生懸命応えた。

そのまま長い間ふたり抱き合う。もう一瞬も離れたくない。
 
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