契約妻失格と言った俺様御曹司の溺愛が溢れて満たされました【憧れシンデレラシリーズ】
エピローグ 三葉夫妻の朝、その後
ピリリと鳴る携帯のアラームに、楓は薄く目を開ける。
すでにブラインドが開けられた大きな窓から柔らかな冬の朝日が差し込んでいた。楓は起き上がり大きく伸びをした。
三葉家二階の寝室のこの大きなベッドは元々は和樹がひとりで寝ていたもの。今は夫婦ふたりで使っている。
広くて快適、なにより彼にくっついて寝られるのが幸せだが、今は彼の姿は隣になかった。
ベッドを出て、カーディガンを羽織り階下へ続く階段を下りる。
リビングでソファに座りコーヒーを飲んでいた和樹が振り返った。
「おはよう」
「おはようございます」
彼はすでにスーツ姿だった。目をこすりながら楓がソファに座ると、自分の分のカップを持って立ち上がりキッチンへ行く。
まだ覚醒していない頭で朝の庭をぼんやり見つめる楓の前に、いい香りを漂わせるコーヒーカップが置かれた。
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます」
湯気が上がる温かいカップを手に取りまずはその温もりを感じ取る。
寒い朝はこれだけで幸せな気分になる。
そして熱いコーヒーをひと口飲むと、ゆっくりと目が覚めていく。
「ふふふ、美味しい」
隣に腰を下ろして、楓の様子を見守っていた和樹が、緩む頬にキスをした。
ふたりが本当の夫婦になって半年経った。
相変わらず朝早くに出勤する彼は、楓よりも早く起きて仕度をする。彼が出かける少し前に起きる楓のために、こうしてコーヒーを淹れてくれるのが、ふたりの新しい習慣だ。
もちろん楓ははじめ断った。忙しく世界中を飛び回る彼に、こんなことをさせるなんて申し訳ないしあり得ない。でもいくら言っても彼は決して止めようとしなかった。
『好きなようにさせてくれ。俺が淹れたコーヒーをぼーっとしながら飲む楓を見ると、今日も一日頑張ろうって気になるんだ。俺は君に妻の役割を求めないと約束した。でも愛されてほしいとは言ったはずだ』
そうまで言われては、それ以上嫌だとは言えなくなってしまう。
楓だって彼に淹れてもらったコーヒーで目を覚ます朝はこれ以上ないくらいに幸せなのだから、今は感謝の気持ちを忘れずにありがたくいただくことにしている。
そして彼は言葉の通りコーヒーを飲む楓を彼はいつもこうやってすぐ隣で見ているのだ。
気持ちが通じ合ってからの彼は、砂糖菓子のように甘い。
「今日はまだ眠そうだな。昨日は遅くまで残業だったから疲れが抜けないんだろう」
「そうですね、昨日はちょっと大変でした。でもなんとかなってよかったです。今日は早く帰れそうです」
ひとりで生きていくために、打ち込んでいた経理の仕事だが、べつにそんな理由がなくたって好きだったのだと、改めて実感している。
経理は会社の要なのだ。三葉商船という巨大な船が大海原を安全に航行するために、しっかりと支えたい。
和樹が目を細めて微笑んで楓のまた楓の頬にキスをした。でもすぐに残念そうにする。
「俺の方は遅くなる。楓が寝る時間までには、帰れそうだが夕食は適当に済ませて帰るよ」
「そうですか」
残念な気持ちで楓は頷いた。そう多くはないけれど、彼が帰れる日は楓の作る簡単な夕食を食べる時もある。
そんな時はたとえ簡単なものだとしてもなんだか作るのが楽しいのだ。
すでにブラインドが開けられた大きな窓から柔らかな冬の朝日が差し込んでいた。楓は起き上がり大きく伸びをした。
三葉家二階の寝室のこの大きなベッドは元々は和樹がひとりで寝ていたもの。今は夫婦ふたりで使っている。
広くて快適、なにより彼にくっついて寝られるのが幸せだが、今は彼の姿は隣になかった。
ベッドを出て、カーディガンを羽織り階下へ続く階段を下りる。
リビングでソファに座りコーヒーを飲んでいた和樹が振り返った。
「おはよう」
「おはようございます」
彼はすでにスーツ姿だった。目をこすりながら楓がソファに座ると、自分の分のカップを持って立ち上がりキッチンへ行く。
まだ覚醒していない頭で朝の庭をぼんやり見つめる楓の前に、いい香りを漂わせるコーヒーカップが置かれた。
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます」
湯気が上がる温かいカップを手に取りまずはその温もりを感じ取る。
寒い朝はこれだけで幸せな気分になる。
そして熱いコーヒーをひと口飲むと、ゆっくりと目が覚めていく。
「ふふふ、美味しい」
隣に腰を下ろして、楓の様子を見守っていた和樹が、緩む頬にキスをした。
ふたりが本当の夫婦になって半年経った。
相変わらず朝早くに出勤する彼は、楓よりも早く起きて仕度をする。彼が出かける少し前に起きる楓のために、こうしてコーヒーを淹れてくれるのが、ふたりの新しい習慣だ。
もちろん楓ははじめ断った。忙しく世界中を飛び回る彼に、こんなことをさせるなんて申し訳ないしあり得ない。でもいくら言っても彼は決して止めようとしなかった。
『好きなようにさせてくれ。俺が淹れたコーヒーをぼーっとしながら飲む楓を見ると、今日も一日頑張ろうって気になるんだ。俺は君に妻の役割を求めないと約束した。でも愛されてほしいとは言ったはずだ』
そうまで言われては、それ以上嫌だとは言えなくなってしまう。
楓だって彼に淹れてもらったコーヒーで目を覚ます朝はこれ以上ないくらいに幸せなのだから、今は感謝の気持ちを忘れずにありがたくいただくことにしている。
そして彼は言葉の通りコーヒーを飲む楓を彼はいつもこうやってすぐ隣で見ているのだ。
気持ちが通じ合ってからの彼は、砂糖菓子のように甘い。
「今日はまだ眠そうだな。昨日は遅くまで残業だったから疲れが抜けないんだろう」
「そうですね、昨日はちょっと大変でした。でもなんとかなってよかったです。今日は早く帰れそうです」
ひとりで生きていくために、打ち込んでいた経理の仕事だが、べつにそんな理由がなくたって好きだったのだと、改めて実感している。
経理は会社の要なのだ。三葉商船という巨大な船が大海原を安全に航行するために、しっかりと支えたい。
和樹が目を細めて微笑んで楓のまた楓の頬にキスをした。でもすぐに残念そうにする。
「俺の方は遅くなる。楓が寝る時間までには、帰れそうだが夕食は適当に済ませて帰るよ」
「そうですか」
残念な気持ちで楓は頷いた。そう多くはないけれど、彼が帰れる日は楓の作る簡単な夕食を食べる時もある。
そんな時はたとえ簡単なものだとしてもなんだか作るのが楽しいのだ。