契約妻失格と言った俺様御曹司の溺愛が溢れて満たされました【憧れシンデレラシリーズ】
「ついでだから、デメリットについても話をしておこう」
 
和樹が口を開いた。

「私と君の結婚は世間向けて大々的に発表する。そうしなくては俺の目的が達成されないからね。だがそれによって君の立場は……もちろん、今の部署で引き続き働いてもらってかまわないが、少々複雑な立場に立たされる。場合によっては不快な思いをすることもあるだろう」
 
やっかみ、嫉妬、嫉みの対象になることが予想されるということだ。
 
当然だ。

地味な経理課の一社員から将来の社長夫人というポジションになるのだから。しかも相手が抜群のビジュアルで女性社員から注目を集めている彼なのだ。

ただ「羨ましい」と言われるだけでは済まないだろう。


「もちろんこちらでも策はこうじるから、ひどければ気軽に相談してくれてかまわない。だがすべてを完全に未然に防ぐことは不可能だ」
 
頭をフル回転させながら、楓はその話を聞いていた。

その状況、確かにうっとおしそうだが、両親からの"結婚しろ、さもなければ田舎へ帰ってこい攻撃"に比べればそれほど問題ではないような気がした。
 
そもそも楓はすでに社内で鉄の女と呼ばれていてお世辞にも好かれているとはいえない。

食堂でヒソヒソ言われたこともあるが、そのくらいはなんてことなかった。直接的になにかされたら、対処してもらえばいい。

「俺にとってのデメリットは……まあ、女の趣味が意外だったなと思われるくらいだな」
 
それよりも気にかかるのは、彼のこの問題ありの性格だが相手との相性は必要ないというさっきの話を思い出し、その考えを封じ込めた。それよりも、契約の相手として信用できるかどうかだ。

「家の中で、君に妻としての役割を求めるようなことは絶対にない。君の生活を縛ることもないから、安心してくれていい。俺は約束は守る」
 
言い切る彼をジッと見つめる。

会ったばかりの相手を信じ切るというところまでいけたわけではないが、彼が、ともすれば弱みともなりかねない手の内をすべてさらけ出したのは事実だろう。

自社の社員相手にそこまでしておいて簡単に裏切るとは思えなかった。

「期間はいつまででしょうか」
 
尋ねると彼はニヤリと笑った。

「俺の方は、差しあたって社内での立場が固まるまでだ。場合によっては数年かかるかもしれない。君の方も、すぐに離婚しましたではご両親が納得しないと思うが」

「そうですね。少なくとも弟が結婚するくらいまでは……」
 
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