契約妻失格と言った俺様御曹司の溺愛が溢れて満たされました【憧れシンデレラシリーズ】

離婚したらしたで、出戻りだなんだとうるさく言うだろうが、一度はしたという実績があれば「もう結婚は懲り懲りだ」などと言って黙らせることはできるだろう。

離婚歴があれば、見合い話もなくなるはずだ。

「そのあたりは柔軟に考えることにしよう。どちらか一方が解消したいと思ったらもう一方は応じることとするのはどうだ？」
　
それならば安心だ。都合が悪くなればいつでもやめられるのだということが、わずかに残っていた迷いを吹き飛ばす最後のひと押しになった。
　
心を決めて息を吐くと、彼の方にはそれで楓の決断が伝わったようだ。

組んだ両手を膝に置いて満足げな笑みを浮かべている。

その余裕たっぷりな様子を一瞬癪だと思うものの決意は揺らがなかった。

さっき彼が言った通り、チャンスは逃さないようにするべきだ。
　
こんなに好条件の話はこの先もう絶対にない。

「わかりました。契約します」
　
あえて結婚という言葉をさけて楓は言う。その通りこれは百パーセントビジネスだ。

「よろしくお願いします」
　
言葉に力を込めてそう言うと、和樹がニヤリと笑って頷いた。