契約妻失格と言った俺様御曹司の溺愛が溢れて満たされました【憧れシンデレラシリーズ】
「おつかれさまでした。いかがですか?」
肩を覆っていたタオルを外して、美容師が弾んだ声を出す。
鏡の中の自分を見て楓は心底驚いていた。
「あ、明るい感じになりましたね……」
ハサミを入れてトリートメントをした髪は、色も長さも変えてはいないものの顔まわりを整えたからだろうか、随分すっきりしている。
メイクも、いつもより少しやり方を工夫するだけで顔立ちがはっきりしたように思う。見違える、とはこのことだろう。
「すごい、魔法みたいですね……」
思わずそんな言葉が口から出た。
実際そんな気持ちだった。
野暮ったくて地味というのが楓の特徴だったはずなのに、少し手を入れただけでガラリと雰囲気を変えてしまうなんて。
「ふふふ、少しお手伝いさせていただいただけです。旦那さまのおっしゃる通り、奥さまもともとお綺麗でいらっしゃるから」
その言葉に、楓は不思議な気持ちになる。
もちろん彼女の言うことはお世辞に違いないけれど、でも印象がよくなったことは事実なのだ。
昨夜彼は、『素質がない』と言う楓に、『なんとかなるだろう』と言った。
失礼な言い方だ思いながらも楓の方は『なんとかなる』などとは微塵も思わなかったのに……。
くすぐったいような、恥ずかしいような、落ち着かない気持ちで楓が和樹の待つ別室へ行くと、彼は窓際に立ち電話をかけていた。どうやら仕事をしているようだ。
楓の鼓動がとくんと跳ねる。
緑豊かなホテルの庭から差し込む日の光を背にした彼は男性雑誌の表紙のようだった。
恐る恐る近づくと、彼は楓に気がついて電話の相手に断ってから通話を切る。そして振り向き、目を見開いた。
「お、お待たせしました……」
おずおずと楓は言うが答えはない。
彼は、眉を寄せてまるで珍しいものを見るような表情で、携帯を手にしたまま固まっている。
その彼の反応に、楓は急に心配になった。
ついさっき鏡を見た時は、まずまずの出来だと思ったけれど、彼から見ると違ったのではないか?と思ったからだ。
よく考えてみると、明るい印象にはなったものの、彼の妻に必要な華やかさはまったくない。
それこそ美の軍団の足もとにも及ばないだろう。
肩を覆っていたタオルを外して、美容師が弾んだ声を出す。
鏡の中の自分を見て楓は心底驚いていた。
「あ、明るい感じになりましたね……」
ハサミを入れてトリートメントをした髪は、色も長さも変えてはいないものの顔まわりを整えたからだろうか、随分すっきりしている。
メイクも、いつもより少しやり方を工夫するだけで顔立ちがはっきりしたように思う。見違える、とはこのことだろう。
「すごい、魔法みたいですね……」
思わずそんな言葉が口から出た。
実際そんな気持ちだった。
野暮ったくて地味というのが楓の特徴だったはずなのに、少し手を入れただけでガラリと雰囲気を変えてしまうなんて。
「ふふふ、少しお手伝いさせていただいただけです。旦那さまのおっしゃる通り、奥さまもともとお綺麗でいらっしゃるから」
その言葉に、楓は不思議な気持ちになる。
もちろん彼女の言うことはお世辞に違いないけれど、でも印象がよくなったことは事実なのだ。
昨夜彼は、『素質がない』と言う楓に、『なんとかなるだろう』と言った。
失礼な言い方だ思いながらも楓の方は『なんとかなる』などとは微塵も思わなかったのに……。
くすぐったいような、恥ずかしいような、落ち着かない気持ちで楓が和樹の待つ別室へ行くと、彼は窓際に立ち電話をかけていた。どうやら仕事をしているようだ。
楓の鼓動がとくんと跳ねる。
緑豊かなホテルの庭から差し込む日の光を背にした彼は男性雑誌の表紙のようだった。
恐る恐る近づくと、彼は楓に気がついて電話の相手に断ってから通話を切る。そして振り向き、目を見開いた。
「お、お待たせしました……」
おずおずと楓は言うが答えはない。
彼は、眉を寄せてまるで珍しいものを見るような表情で、携帯を手にしたまま固まっている。
その彼の反応に、楓は急に心配になった。
ついさっき鏡を見た時は、まずまずの出来だと思ったけれど、彼から見ると違ったのではないか?と思ったからだ。
よく考えてみると、明るい印象にはなったものの、彼の妻に必要な華やかさはまったくない。
それこそ美の軍団の足もとにも及ばないだろう。