契約妻失格と言った俺様御曹司の溺愛が溢れて満たされました【憧れシンデレラシリーズ】
連れて行かれたのは、三十八階のスイートルームだった。
ショップかと見まごうほどずらりと並んだ服や靴、バッグやアクセサリーを背に十名ほどのスタッフがふたりを待ち構えていた。
「三葉さま、本日はよろしくお願いいたします」
皆に一斉に頭を下げられて、楓は唖然としてしまう。
さっき和樹は百貨店の外商を呼んだと言っていたから心積りはしていたが、実際に目にすると迫力が違う。
こんなの映画の中でしか見たことがない。それなのに、和樹は平然として皆に挨拶をしている。
「こちらこそよろしく。今日は妻の普段の服を一式揃えたい。少し……手持ちの服や靴が少なくなってきたようだから」
そう言って楓の腰に腕を回して微笑んだ。
「楓、好きなだけ選べばいいからな」
人前で腰に手を回されたことと、気持ち悪いくらい優しい言葉に楓は驚いて彼を見る。彼の目が"もうはじまってるぞ、ちゃんとやれ"と言っている。
外商たちの迫力に圧倒されて、頭から一瞬飛んでいたけれど、夫婦のフリの練習をすることになっていたのだと思い出して、楓は慌てて頷いた。
「わ、わかりました」
そして目の前に並んでいるスタッフたちに向かって、深々と頭を下げた。
「本日はお集まりいただきありがとうございます。どうぞよろしくお願いします」
楓ひとりのために、たくさんの品物を持って皆来てくれたのだ。そうするのが当然だと思ったのだが……。
顔を上げると、スタッフたちはやや驚いたような表情になっている。そして次の瞬間、皆笑顔になった。
「まぁ、素敵な奥さまですこと! 精一杯お手伝いさせてもらいますので、こちらこそよろしくお願いします」
その彼らの反応に、楓はどきりとして和樹を見る。彼の妻としては間違った振る舞いだったのかと思ったからだ。和樹の口元が微妙に歪んでいる。やはりそうだったようだ。
とはいえ、眉間にシワは寄っていないし、笑いを堪えているようにも見えるから致命的なミスではないようだが……。
和樹が咳払いをして、気を取り直したように口を開いた。
「さっそくはじめてくれ。俺は、そっちのソファにいるから」
そう言って窓ぎわに置かれたソファの方へ行ってしまう。
なんだか心細い気持ちで楓はそれを見送った。すぐにスタッフに囲まれる。
「それではさっそくはじめましょう。奥さま、お好みはございますでしょうか?」
ベテランと思しきスタッフがニコニコとして楓の隣へやってくる。別のスタッフが、大きな姿鏡を楓の前に置いた。
楓の好みは、シンプルかつ実用的、加えてコスパがいいというものだが、まさかそれを口にするわけにいかない。とりあえず使用目的を伝えることにする。
ショップかと見まごうほどずらりと並んだ服や靴、バッグやアクセサリーを背に十名ほどのスタッフがふたりを待ち構えていた。
「三葉さま、本日はよろしくお願いいたします」
皆に一斉に頭を下げられて、楓は唖然としてしまう。
さっき和樹は百貨店の外商を呼んだと言っていたから心積りはしていたが、実際に目にすると迫力が違う。
こんなの映画の中でしか見たことがない。それなのに、和樹は平然として皆に挨拶をしている。
「こちらこそよろしく。今日は妻の普段の服を一式揃えたい。少し……手持ちの服や靴が少なくなってきたようだから」
そう言って楓の腰に腕を回して微笑んだ。
「楓、好きなだけ選べばいいからな」
人前で腰に手を回されたことと、気持ち悪いくらい優しい言葉に楓は驚いて彼を見る。彼の目が"もうはじまってるぞ、ちゃんとやれ"と言っている。
外商たちの迫力に圧倒されて、頭から一瞬飛んでいたけれど、夫婦のフリの練習をすることになっていたのだと思い出して、楓は慌てて頷いた。
「わ、わかりました」
そして目の前に並んでいるスタッフたちに向かって、深々と頭を下げた。
「本日はお集まりいただきありがとうございます。どうぞよろしくお願いします」
楓ひとりのために、たくさんの品物を持って皆来てくれたのだ。そうするのが当然だと思ったのだが……。
顔を上げると、スタッフたちはやや驚いたような表情になっている。そして次の瞬間、皆笑顔になった。
「まぁ、素敵な奥さまですこと! 精一杯お手伝いさせてもらいますので、こちらこそよろしくお願いします」
その彼らの反応に、楓はどきりとして和樹を見る。彼の妻としては間違った振る舞いだったのかと思ったからだ。和樹の口元が微妙に歪んでいる。やはりそうだったようだ。
とはいえ、眉間にシワは寄っていないし、笑いを堪えているようにも見えるから致命的なミスではないようだが……。
和樹が咳払いをして、気を取り直したように口を開いた。
「さっそくはじめてくれ。俺は、そっちのソファにいるから」
そう言って窓ぎわに置かれたソファの方へ行ってしまう。
なんだか心細い気持ちで楓はそれを見送った。すぐにスタッフに囲まれる。
「それではさっそくはじめましょう。奥さま、お好みはございますでしょうか?」
ベテランと思しきスタッフがニコニコとして楓の隣へやってくる。別のスタッフが、大きな姿鏡を楓の前に置いた。
楓の好みは、シンプルかつ実用的、加えてコスパがいいというものだが、まさかそれを口にするわけにいかない。とりあえず使用目的を伝えることにする。