契約妻失格と言った俺様御曹司の溺愛が溢れて満たされました【憧れシンデレラシリーズ】
三葉夫妻に異変あり
「今週一週間、階下は大騒ぎでしたよ」
三葉商船本社ビル最上階にある副社長室にて、午後に予定されている会合に向けて資料を読み込んでいた和樹は、第一秘書の一ノ瀬の言葉に、顔を上げた。
「大騒ぎ?」
尋ねると彼は含みのある笑みを浮かべた。
「奥さまの件です。週末デートの効果でしょう」
和樹は手にしていた資料を置いて椅子に身体を預けた。
ひとつ年上の一ノ瀬は、戦前、三葉家の家令を務めていた一ノ瀬家の長男で兄弟のように育った仲だ。
もちろん現代となっては家としての上下はないが、三葉商船で働いていて、和樹が海外事業部部長として世界中を飛び回っていた頃から、和樹の秘書のような仕事をしている。
和樹が唯一、心を許せる人物だ。
勤務中は一応敬語を使っているが、基本的には遠慮がない。
楓との契約の件も知っていて、楓を和樹との結婚により嫌がらせを受けるようなことはないかも含めて、社内の情報に常に目を光らせている。
仮面夫婦という噂が流れていることを和樹に知らせたのも彼だった。
「奥さまが見違えるほどお綺麗になられたので、皆度肝を抜かれているようです。奥さまといえば、白と黒の上下に紺色のカーディガンで知られていましたから。それ以外の物を着て出勤されただけでも珍しく感じるのでしょう。週末に揃えられたんですね?」
「ああ」
一ノ瀬からの指摘に和樹は頷いた。
先週末の楓との買い物から六日が経った。
次の日から和樹はまた忙しくする日々で彼女としっかり顔を合わせているわけではないが、どうやらしっかりとやっているようだ。
「それにしてもお綺麗になられました。はじめは皆、奥さまとわからなかったくらいです。『こんなに美人だと知らなかった』と言っている社員もおりますよ」
その意見を、和樹は鼻で笑った。
「天下の三葉商船の社員の目は節穴だな。彼女は無駄に着飾らないだけだ。少し注意して見れば、彼女の魅力的だということくらいすぐにわかるはずだ」
自分もはじめは楓の質素ななりに批判的なことを言ったのも忘れて、和樹は得意な気分で言った。
あの夜、なぜ自分が彼女に契約終了を言い渡さなかったのか、その答えに辿り着いたと和樹は思う。
三葉商船本社ビル最上階にある副社長室にて、午後に予定されている会合に向けて資料を読み込んでいた和樹は、第一秘書の一ノ瀬の言葉に、顔を上げた。
「大騒ぎ?」
尋ねると彼は含みのある笑みを浮かべた。
「奥さまの件です。週末デートの効果でしょう」
和樹は手にしていた資料を置いて椅子に身体を預けた。
ひとつ年上の一ノ瀬は、戦前、三葉家の家令を務めていた一ノ瀬家の長男で兄弟のように育った仲だ。
もちろん現代となっては家としての上下はないが、三葉商船で働いていて、和樹が海外事業部部長として世界中を飛び回っていた頃から、和樹の秘書のような仕事をしている。
和樹が唯一、心を許せる人物だ。
勤務中は一応敬語を使っているが、基本的には遠慮がない。
楓との契約の件も知っていて、楓を和樹との結婚により嫌がらせを受けるようなことはないかも含めて、社内の情報に常に目を光らせている。
仮面夫婦という噂が流れていることを和樹に知らせたのも彼だった。
「奥さまが見違えるほどお綺麗になられたので、皆度肝を抜かれているようです。奥さまといえば、白と黒の上下に紺色のカーディガンで知られていましたから。それ以外の物を着て出勤されただけでも珍しく感じるのでしょう。週末に揃えられたんですね?」
「ああ」
一ノ瀬からの指摘に和樹は頷いた。
先週末の楓との買い物から六日が経った。
次の日から和樹はまた忙しくする日々で彼女としっかり顔を合わせているわけではないが、どうやらしっかりとやっているようだ。
「それにしてもお綺麗になられました。はじめは皆、奥さまとわからなかったくらいです。『こんなに美人だと知らなかった』と言っている社員もおりますよ」
その意見を、和樹は鼻で笑った。
「天下の三葉商船の社員の目は節穴だな。彼女は無駄に着飾らないだけだ。少し注意して見れば、彼女の魅力的だということくらいすぐにわかるはずだ」
自分もはじめは楓の質素ななりに批判的なことを言ったのも忘れて、和樹は得意な気分で言った。
あの夜、なぜ自分が彼女に契約終了を言い渡さなかったのか、その答えに辿り着いたと和樹は思う。