契約妻失格と言った俺様御曹司の溺愛が溢れて満たされました【憧れシンデレラシリーズ】
「そうです。でもべつに夜逃げしてきたわけじゃないですよ。実家に帰省していて今戻ったところなんです。ありがちかもしれないですけど、この年の女が独身だとそれはもう針のむしろで……」
 
そのまま、楓は自分自身の生い立ちと、実家であった出来事を、洗いざらい話してしまう。

家庭の恥を晒すことになるけれど、目の前の男性は名前も知らないおそらくもう二度と会わない相手だ。少しくらいはいいだろう。

「なるほどね。それはつらい状況だ」
 
ウイスキーグラス片手に楓の話を聞いていた男性が、同情するように言った。

「男性は、結婚は墓場だなんて言いますけど、私からすればそれは女性側のセリフです。すべてを相手に合わせなくちゃいけないんですから」
 
ぷりぷりして楓が言うと、男性は苦笑した。

「まぁ、それは相手にもよると思うけど。世の中には星の数ほど男はいるわけだし。ちなみに君は一度も彼氏がいたことはないの?」

「あります」
 
楓は不機嫌に答えた。
 
高校を卒業するまで恋愛からは意識して遠ざかっていた。

地元の男は、父と同じような価値観を持っていると思っていたからだ。だからはじめて彼氏ができたのは、東京に出てきてから。

大学三年生の時だった。相手は、同じサークルの同級生で、告白を受けた時点で男性として惹かれてたというわけではない。

それでも付き合おうと思った決め手は、優しい人だったからということと、東京生まれの東京育ちの人だったということである。

都会育ちの彼ならば、きっと男女関係なく対等な関係が築けると思ったのだ。
 
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