わたしは殺され、あなたを殺す
「皆も知っての通り、ヴァディム・ディメイズとエカテリーナ・ヴェレスは婚礼を挙げる!」
一学年上のヴァディムが迎えた卒業式の会場で代表として壇上に立った彼が張り上げた声に、その言葉に、セレニカは耳を疑った。
「時期は半年後だ、無論この場の皆を招待しよう。盛大に祝ってくれ!」
隣に並んだエカテリーナと手を取り合い、視線を交わすヴァディム。
生徒も教師も全員が全員「王太子殿下万歳! 妃殿下万歳!」と王太子と婚約者を褒め称える声を上げている。
何が起きているのか、セレニカにはわからなかった。その背後には友人たちが控え、二人を祝いにこやかに拍手を送っている。
目の前で展開する現実に、理解が追いつかない。
ヴァディムはセレニカを選んだはずで、いつだって優しくて、愛していると囁いて、……そう、それこそ昨日だって愛を交わしたところだというのに。
混乱から目眩を起こし、傾ぐ身体を支えるため会場の端に寄る。わあわあと騒がしい音に耳を塞いで、その場に小さくなって目を閉じた。