エリート御曹司はママになった初恋妻に最愛を注ぎ続ける
とりあえずダメもとでメッセージを送ってみる。涼帆の勤務先は大手企業の紫藤インテリア。生活用品の企画・製造・販売を手掛ける紫藤ホールディングスの中でも、家具をメインに扱っている会社だ。
涼帆は六本木のショールームで販売員をしているので、すぐには返事が来ないだろう。
「お腹空いたけど、ひとりじゃ作る気しないな」
両親を亡くしているとはいえ、その直後に叔父と叔母の温かい家庭に迎え入れてもらい、仕事では日常的に接客をしていたので、ひとりには慣れていない。
家族がいるって、本当に幸せなことだったんだな……。
ため息をつき、テーブルに突っ伏す。
いつかは私も生涯をともにする伴侶を見つけて理想の家庭を築きたいけれど、実際は男女交際の経験すらない。
叔父と叔母への恩返しの気持ちばかり先行していたせいか、恋愛しようなんて気持ちは自然と起こらなかったのだ。
大学時代も、美人でスタイルのよい涼帆は男子学生モテていたけれど、私は身長一五五センチの小柄で丸顔。それに加えて小さな鼻や口、垂れ目が幼く見えるらしく、妹かマスコット扱いでいじられるばかり。
それが嫌だったわけではないけれど、一度くらいはちゃんと女性扱いをされてみたかった。