エリート御曹司はママになった初恋妻に最愛を注ぎ続ける

「んー、だめぇ」

 やがて、あどけない声で胡桃がそう言うのが聞こえた。

 もっと好意的な返事を想像していたので、胡桃がどんな様子なのか気になって、木の陰からそっとふたりの様子を覗いた。

 縁側に並んで座り、胡桃は地面に届かない足をぶらぶらさせている。

「え~、なんでダメなの?」
「だって、パパは、ママがすちなひとだから」

 胡桃はそう言うと、ぴょん、と縁側から飛び降り、麻人さんの正面に仁王立ちした。

 パパは、ママが好きな人……。

 胡桃の拙い言葉ではハッキリと本質が読み取れないが、不思議と腑に落ちる言葉だった。

「あさにぃ、胡桃のママ好きだよ?」
「ちがう~、ママとあさにぃは、おともだち」
「お友達はパパになれないの?」
「なれない」

 どういう理屈かはわからないが、胡桃はなぜか自信満々である。胡桃なりに私と麻人さんの関係を見てきた結果なのかもしれない。

 なんとなく脱力して木の陰から出ようとすると、後ろから誰かにポンと肩を叩かれた。

< 128 / 155 >

この作品をシェア

pagetop