エリート御曹司はママになった初恋妻に最愛を注ぎ続ける
「アイツと東京に帰んの?」
「私は、そうできたらいいなと思ってるんですけど……胡桃の気持ちをじっくり確認してからと思っています」
目の前では胡桃が、自分の作ったシャボン玉が太陽の反射で色を変えるのを見て、目をキラキラさせている。
たくさんの可能性を秘めた、胡桃の小さくて真ん丸な瞳。その光を奪うようなことはしたくないから、焦りは禁物だ。
「亜椰ちゃんって、そういうとこめんどくさいよな」
「め、めんどくさい?」
急に悪態をつかれ、声が裏返った。
「好きなら好きで、もっと素直になれよ。大好きなパパのところで一緒に暮らそうって、胡桃にも堂々と言えばいい」
素直になれ――。涼帆からも言われた言葉だけれど、実践するのは難しい。
「そんな簡単な問題じゃ……」
「胡桃が行きたくないって言ったら、そん時に次の手を考えりゃいいだろ。ただし、胡桃は行きたくないなんて言わないと思うぜ。これ、オトモダチの勘な」
麻人さんはそう言ってニッと笑うと、立ち上がって胡桃の相手をし始める。