エリート御曹司はママになった初恋妻に最愛を注ぎ続ける
彼の言い分はちょっぴり乱暴だが、一理あるような気もした。いつ相談しようか、そのタイミングを躊躇っていても、胡桃にはなにも伝わらない。
だったらすぐにでも話してみて、胡桃が嫌だと言ったら、その時にきちんと彼女の気持ちを尊重すればいい。
考え方を変えただけなのに、ずいぶん気持ちが楽になった。
「胡桃、もう少ししたらお家に入っておやつを食べようか。ママ、胡桃に大切なお話があるんだ」
「おはなし? うん、わかった~」
「じゃ~あさにぃはそろそろ帰ろうかな。またサボってるって怒られそう」
「あっ、そういえば……こんな時間にうちにいていいのかと思ってましたよ」
私を駅に送ってくれた時だけでなく、胡桃と遊んでいるまさに今この瞬間も、彼は仕事を放り出していたらしい。
それでも悪びれない彼の姿に、気の抜けた笑いがこぼれた。
麻人さんを見送った後、胡桃の好きなクッキーと麦茶を用意し、居間でふたりになる。
私は手に汗を握るほど緊張していたが、胡桃がサクッとクッキーを齧ったところで、意を決して口を開いた。
「あのね、胡桃」
「なぁに~?」
「パ……パパの、ことなんだけど」
クッキーに夢中だった胡桃が目をぱちぱちさせて、私を見る。
ええい、言ってしまえ。