エリート御曹司はママになった初恋妻に最愛を注ぎ続ける
「今度、会えることになったんだけど……胡桃は、会いたい?」
厳密に言えば、胡桃は一度彼に会っている。瑛貴さんは私が不在の間に偶然この家にやってきた時、胡桃と少し言葉を交わしたと言っていた。
もちろん、胡桃は彼がパパだとは夢にも思わなかっただろうけれど。
「くるみ、あいたい!」
「えっ……ホント?」
好意的な反応が以外で、ぽかんとしてしまう。会いたくないと言われるよりはいい。だけど、パパと言っても初対面に近い男性に会うのに、不安や緊張はないのだろうか。
「うん! あって、おれいゆうの」
「お礼? なんの?」
「あれ。パパがかってくれたでしょ?」
胡桃の小さな人差し指が示したのは、いつも遊んでいるままごとキッチンだった。
そういえば、パパが買ってくれたものだと教えてあったっけ……。
「うん、よく覚えてたね。じゃあ、少し遠いんだけど、今度新幹線に乗ってパパに会いに行く?」
「いく~! くるみ、しんかんせんはじめて!」
興奮しすぎて立ち上がった胡桃が、その場でぴょんぴょん跳ねる。どうやら私の心配は杞憂だったらしい。
早々とおやつを食べ終え、「しゅっぱーつ」と新幹線の真似をして走り始めてしまった胡桃。そのかわいい姿を見ていてあることを思いついた私は、スマホを取り出す。
そしてはしゃぐ胡桃の姿をスマホで録画すると、【胡桃が瑛貴さん……パパに、会いたいそうです】とメッセージを添えて、瑛貴さんへ送った。