エリート御曹司はママになった初恋妻に最愛を注ぎ続ける

「待って……んっ、はぁっ」
「待っていたら、きみたちは新幹線に乗って帰ってしまうだろ。……もう少しだけ」

 戸惑いながらも、遠慮がちにキスに応えてくれる亜椰。車内に熱い吐息が満ちて、脳が痺れる。

 俺は至近距離で彼女と視線を絡ませつつ、ありのままの本音を伝える。

「早く一緒に暮らしたい。そうすればこんな場所じゃなく、もっと広い場所で亜椰をかわいがれるのに」
「瑛貴さん……」
「その時は、離れていた間の分までたっぷり愛を注ぐから、覚悟しておいて」

 亜椰の耳元で吐息たっぷりに囁くと、彼女が耳が真っ赤に染まる。

 思わずそのふちに軽く歯を立てると亜椰の肩がビクッと跳ね、潤んだ瞳に睨まれる。

 ……どうやら少し、やりすぎたようだ。

「悪かった。怒らないでくれ」
「怒りますよ……! 後ろに胡桃だっているのに」

 すっかり機嫌を損ねてそっぽを向いてしまう亜椰だが、その仕草すら愛らしくてたまらないんだから、俺はかなり重症だ。

「ごめん。反省してるからこっちを向いて」
「もうキスしないって約束できますか……?」
「それはどうかな」
「じゃあ二度とそちらを向きません!」
「冗談だよ、ごめんって」

 亜椰がかわいいのでまだまだ意地悪したいが、あまり遅くなっては悪い。名残惜しい気持ちを振り切って、駅までのルートへ戻った。

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