エリート御曹司はママになった初恋妻に最愛を注ぎ続ける
……母かどうかなんてどうでもいい。誰であろうと助けなければ。
俺は小さく頭を振ると、あっという間に交差点の周囲にできた人垣の中心へ駆けて行く。スマホを取り出して110番に通報しながら、中心に横たわる女性のそばへ駆け寄り、しゃがみ込んだ。
目立った出血はないが意識を失いぐったりしているその人は、記憶にいる母より年は取っているものの、やはりどこからどう見ても、俺の母親だった。
「お母様は事故の衝撃で肘を強く打ち付けたようで、骨折しています。ただ、今のところ手術の必要はなく、保存両方で十分治癒が見込めると考えています」
交差点でトラックと衝突し救急車で緊急搬送された母は、ひと通りの処置と検査を受けた後、整形外科病棟に入院する運びとなった。
事故の際に意識がなかったのは軽い脳震盪だったそうで、脳自体は無傷だったそう。もちろん命に別状はない。
亜椰たちには病院へ向かう前に連絡を入れてあり、予定通り静岡に帰ってもらった。
後で、母の状態についても一応伝えるつもりだ。