エリート御曹司はママになった初恋妻に最愛を注ぎ続ける
「そうですか。ありがとうございます」
「お大事にしてください」
説明を終えて病室を出て行く意思を見送り、ベッドに向き直る。すると俺の視線を避けるように壁の方を向いた母は、けがをしていない方の手を振り、俺を追い払うような仕草をした。
「付き添いなんていらないから帰って」
「目の前で母親が事故に遭ったのを見たんだ。放っておけるわけがない」
「母親って……本気でそう思うの? あなたにとっては、魔女のような女でしょう?」
母は自分を嘲るるように、フッと鼻で笑う。
「魔女。確かにそうだったかもしれないな、昔は」
毎日のように母から邪魔者扱いされ、罵られ、家族愛の存在など到底信じられなかった、あの頃の俺にとっては。
しかし……。
「でも、そんな昔にかけられた魔女の呪いなんて、もう解けてる」
「え……?」
怪訝そうに眉根を寄せ、母がゆっくり俺の方を向く。目が合っても、もう怯えたりしない。