エリート御曹司はママになった初恋妻に最愛を注ぎ続ける
「かけがえのない大切な女性が、呪いを解いてくれたんだ。今さらあなたと一般的な親子関係に戻るのは無理だが、それでもあなたはたったひとりの俺の母親だ。あなたが産んでくれなければ、俺は彼女に出会えなかった。それだけは感謝している」
「瑛、貴……」
ずっと突っ張った態度を取っていた母親が、迷子のように頼りない目をして俺を見る。
そんな風に名前を呼んでくれたのは、いつぶりだろう。物心ついた時には、いつだって刺々しい声で『アンタ』と呼ばれていたから。
「ごめん……私、自分が子どもなのに、子ども、産んじゃったのがいけなかったの」
なみなみと目に涙を浮かべた母が、天井を向いて話しだす。
俺は静かにベッドに歩み寄り、母の言葉に耳を傾けた。
「私がCAの仕事してたのは知ってる……?」
「あぁ。でも、俺を産む前までだろ?」
「そう。ハードな仕事だから、育児と両立は無理だって思って辞めたの。専業主婦で楽に育児しながら、子連れで買い物とかランチとか楽しもうって思ってた」
確かに、俺の記憶の中にいる母は仕事をしていなかった。しかし、いつもなにかに苛立っていて、買い物やランチを楽しんでいたシーンは思い出せない。