エリート御曹司はママになった初恋妻に最愛を注ぎ続ける
「きみは、優しいお母さんになりそうだね」
「えっ、本当?」
「うん。その赤ちゃん、人形だけどうれしそうに見える」
その言葉がうれしくて、男の子に思わず笑顔を返す。
やがて赤ちゃんが泣き止んだ体でマットの上に寝かせ、男の子を見る。
「私たちも寝ましょうか」
「うん。じゃあ、おやすみ」
男の子が布団をかける仕草をして、目を閉じる。しかし、その行動は私のシナリオとは違ったので、トントンと彼の肩を叩いた。
「ちょっと待って、寝る前のキスをするの」
「えっ?」
男の子が、ぎょっとした顔になる。幼い私は、構わずに自分の唇を人差し指で示した。
「亜椰のパパとママはしてたよ。亜椰にもしてくれた」
「それは、パパとママにお願いして……」
「もういないもん。死んじゃった」
小さな頃だったから、こんなこと言われたら相手が困るだろうとは想像できなかったのだろう。
投げやりにそう言うと、男の子はバツが悪そうに「ごめん」と目を伏せる。