エリート御曹司はママになった初恋妻に最愛を注ぎ続ける

「胡桃、今度、サンタさんに会いに行こうか」
「サンタさん……しずおかのおじさんち?」

 夢のないことを言う胡桃に、思わず笑ってしまった。

 確かに、静岡の家では叔父さんがサンタに扮して胡桃にプレゼントを渡してくれた。

 変装していても声は完全に叔父さんだし、プレゼントに値札がついているなど持ち前のおっちょこちょいを発揮していたので、胡桃にもバレバレだったみたいだ。

「違うよ。外国には、本当のサンタさんがいるの」
「トナカイさんのソリにものれるぞ」

 たぶん、想像が追い付かないのだろう。胡桃は困ったように何度も首を傾げている。

「探せば動画があるはずだ。ちょっと待って」

 瑛貴さんが自分のスマホを操作して、胡桃に映像を見せる。

 雪が降り積もったかわいい山小屋、それを取り囲むたくさんのクリスマスツリー。絵本から飛び出してきたような、真っ白な髭と赤い三角帽子のサンタクロース。

 胡桃の目はいつの間にかキラキラしていて、スマホを両手でしっかり握って動画に釘付けになっていた。

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