エリート御曹司はママになった初恋妻に最愛を注ぎ続ける

「目を逸らすな、亜椰。これはままごとじゃない」

 視線を絡ませたまま、体の奥深くを穿たれる。一夜限りの関係だというのに、この夜を忘れるなと言わんばかりの強い快感の連続が、私の理性を奪う。

 声が掠れるほどに喘いで、動物のごとく彼と求め合う。それでも〝愛してる〟の言葉はお互いに使わなかった。

 初恋は美化されるものだって、よく言うもの。

 彼も私も、偶然の再会で一時的に感情が盛り上がっているだけ。

 何度も自分に言い聞かせ、必死で恋心に蓋をしていたその夜。ただのままごとでは決して起こらない奇跡が、私の中にひっそりと息づいていた。


 * * *


「亜椰ちゃん、聞いてくれ。……実は、店を畳もうと思うんだ」
「えっ……?」

 私、新沼(にいぬま)亜椰は突然の宣告に言葉を失っていた。

 目の前で頭を下げているのは、父の弟である叔父の新沼達之(たつゆき)さん。その隣では妻の春枝(はるえ)叔母さんが、申し訳なさそうに目を伏せている。

 ここは、彼らと私の三人で暮らす2LDKのアパート。そして叔父さんの言う『店』とは、アパートからほど近い商店街で彼らと切り盛りしている、小さな家具店のことだ。

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