エリート御曹司はママになった初恋妻に最愛を注ぎ続ける

 容姿端麗で社長と言う立派な肩書きのある男性の手から飴玉が出てきたことにも面喰らったが、その飴玉の包みが懐かしさを呼び起こす柄だったので驚く。

 白地に黄色の水玉模様。幼い頃、初恋のえーきくんにもらった飴と同じ柄だ。

 あれから、どこのお菓子売り場でもこの飴を探してみたが、今の今まで見つけられていない。彼はどこで買ったんだろう。

「社長は相変わらずその飴がお好きですね」

 眼鏡の男性が、隣で同じ飴を口に放り込む美形男性に言う。

「これほど鮮烈な生姜風味は他のメーカーにはないからな。糖分で脳への栄養補給ができる上、生姜の刺激で眠気もスッキリする」
「そっか、生姜……」

 男性たちの会話を聞いて長年の謎が解け、思わず納得して呟いた。

 すると不思議そうな彼らの視線を感じ、慌てて説明する。

「盗み聞きのようになってしまってすみません。この飴、昔に食べたことがあったんですけど、舌にぴりっと感じる風味の正体がずっとわからなかったんです。でも言われてみれば生姜の味だなって思って」
「差し上げておいて恐縮ですが、苦手ではありませんか?」
「いえ、むしろ大好きです。懐かしい味を思い出させてくださってありがとうございます」
「それならよかった」

< 25 / 155 >

この作品をシェア

pagetop