エリート御曹司はママになった初恋妻に最愛を注ぎ続ける
男性に微笑みを返し、手の中の飴を見つめる。
なんだか食べるのがもったいない。着陸の時にひとつ舐めるとして、もうひとつは記念に取っておこう。
なんだか幸先のいい旅行になりそうだ。
長いフライトの間にひと眠りした私は、着陸の直前に例の飴を口に含んだ。チョコレートの甘さの中にほんの少しの刺激を感じる飴の味は、昔と全く変わっていない。
そのことに感動しているうちに、飛行機はヘルシンキ・ヴァンター国際空港へ降り立った。
到着の際のバタバタでふたりのビジネスマンに改めて挨拶をするチャンスを逃したのが残念だったけれど、とうとう念願だったフィンランドにやってこれたのだ。
市内のホテルに向かうため、空港直結の鉄道駅へと向かう。エスカレーターで地下のホームに下りると、自動券売機でチケットを購入し、間もなくホームに滑り込んだ電車に乗り込んだ。
乗客は外国人ばかりで、異国の地に降り立った実感で胸が弾む。
空港駅から三十分ほどでヘルシンキ駅に到着した。そこから徒歩圏内のホテルに荷物を預け、市内の家具店や雑貨店巡りに繰り出す。