エリート御曹司はママになった初恋妻に最愛を注ぎ続ける
「エクスキューズミー」
なんとか自分の欲望と折り合いをつけて本当に欲しいものだけを厳選し、ショップスタッフに声をかける。
フィンランドの公用語はフィンランド語だが、ヘルシンキ市内では英語も問題なく通じるので、簡単な英会話しかできない私でもなんとかなった。
恋人のいない私にペアのマグカップは必要ないため、購入したのはシンプルな食器をいくつかとかわいらしい花柄のホーローケトル。
レジで商品を包んでもらうのを待っていると、店のドアベルが鳴って新たなお客さんがふたり入ってきた。なにげなく振り向いた先にいたのは、男性ふたり組。
つい最近見かけた顔だったので、目をぱちくりさせた。
「社長、寄り道はいい加減終わりにしてください」
「仕事なら移動中にひと通り終わらせただろう。会議は明日の早朝だし、どうせ今頃日本は夜だ。就業時間じゃない」
「またそんな屁理屈を……」
美しいご尊顔の社長さんと、眼鏡の秘書さん。彼らも同じ空港に降り立ったのは当然知っていたけれど、街中でも顔を合わせるなんてすごい偶然だ。