エリート御曹司はママになった初恋妻に最愛を注ぎ続ける
「ん……? あれ、またお会いしましたね」
「こ、こんばんは」
私の視線に気づいたのは、社長さんの方。長い脚でゆったりとこちらに歩み寄ってきた彼は、私が両手にぶら下げている戦利品をしげしげ眺め、なぜか口角を上げる。
「なかなかの審美眼をお持ちのようだ」
「えっ?」
「不躾に失礼。お持ちの袋、私も気に入っているブランドのものばかりなので」
「は、はぁ」
そう言われても反応に困ってしまうが、どうやら社長さんと私は趣味が合うらしい。
「この店の食器も素晴らしいですよね。いつ来ても、棚に並んだ商品のほとんどを購入してしまいます」
「ええ、わかりま……いや、今なんと?」
共感しかけたが、途中で首を傾げる。
聞き間違いでなければ、棚に並んだ商品のほとんどを購入すると言ったような?
怪訝な目で社長さんを見つめていると、ショップスタッフが品物の入った紙袋を手渡してくれたので、慌てて受け取る。
「それでは、私はこれで。フィンランドは宝の山ですから、どうぞ楽しいお買い物を」
「はい。ど、どうも」