エリート御曹司はママになった初恋妻に最愛を注ぎ続ける
その後も約束の時間が近づくまで、市内で気ままに観光や食事を楽しんでいた。しかしある時ふと、行く先々で瑛貴さんの姿を探している自分に気がつく。
どこの店で商品を見ていても、誰かが入店した気配があれば出入り口の方へ注目し、また彼が現れるのではないかと思ってしまうのだ。
……私、瑛貴さんに会いたいの?
自分に問いかけると、顔中に熱が集まる。未体験の動揺で胸がかき乱され、それからは観光に集中できなかった。
瑛貴さんとの約束もあるので午後四時には早々とホテルに戻り、シャワーで汗を流して身支度をする。
約束の六時半までには十分余裕があったのに、鏡の前でああでもないこうでもないとメイクや髪を弄っていたら、あっという間に約束の十分前を切っていた。
「嘘っ」
腕時計を見て焦り、部屋のある五階からエレベーターで一階に下りるまでのわずかな時間さえもどかしく思う。
エレベーターのドアが開くと、せっかく整えていた前髪が乱れるのも構わず、小走りでホテルの出入り口を目指した。
外に出て、彼の姿を探す。目の前を横切る歩道に、それらしき人物の姿はない。