エリート御曹司はママになった初恋妻に最愛を注ぎ続ける

「苦手な食べ物はある?」
「いえっ。ありません」
「なにをそんなに固くなっているんだ? 昔は年上の俺にも平気で『玄関では靴を脱げ』だの『お風呂に入れ』だの、好き勝手指示していたくせに」

 緊張丸出しでガチガチの受け答えを繰り返す私をクスッと笑って、瑛貴さんがそんなことを言う。

「やっぱり……瑛貴さんって……」

 私の記憶の中にも似たような会話が存在する。彼が言うほど命令口調ではなかったと思うけれど、当時の私が彼との年の差なんて気にせずに接していたのは確かだ。

「俺の好きな店に連れて行くから乗って。フレンチの技法を取り入れた、美味しいスカンジナビア料理が食べられるんだ」

 軽く微笑んではぐらかした瑛貴さんが、私を先にタクシーの車内へ促す。

 私の想像は絶対に当たっているのに、肯定してくれないのが歯痒い。
 
 並んでタクシーの後部座席に座ると、私は口を尖らせた。

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