エリート御曹司はママになった初恋妻に最愛を注ぎ続ける
「二回しかお会いしたことがないのに、目に浮かびました」
「だろ? 彼ときたらもう、いつも眉間に皺が寄っているんだ」
原因は瑛貴さんなのでは?
そう思ったけれど、彼らの仕事をきちんと知っているわけでもないのに口に出す勇気はない。
「亜椰は? なんの仕事をしてる?」
「その質問にお答えするより先に、どうして私の名前を知っているのか聞いてもいいですか?」
「さっきも言ったが、種明かしはまだしない」
「……そんなにもったいぶらなくたって」
瑛貴さんがなかなか口を割ってくれないので、思わず小さく頬を膨らませた。
「拗ねるなよ。ムードを演出するためだと言っただろ?」
「だから、どうしてムードなんか気にする必要が――」
問いかけている途中で、シートに軽く置いていた右手を、彼の大きな手に包み込まれる。
私よりずいぶん高い体温が、触れ合う指先から伝わる。
「えっ? あの、なんで手を……っ」
拒絶も抵抗もできずにただ目を白黒させていると、瑛貴さんはスルッとお互いの指同士を絡ませて、ギュッと握った。
「今はこの程度で赤くなるんだな。……昔のきみはもっと大胆だったのに」