エリート御曹司はママになった初恋妻に最愛を注ぎ続ける
「そんなことを気にしていたのか。こちらが誘ったんだから、きみが会計を気にする必要はない」
「ですが、それじゃ悪いです」
「きみは今夜、俺のために時間を作ってくれた。その事実だけで十分だ。もうこの話は終わり」
会計に関する異論は受け付けないという風に、話を終わらせる瑛貴さん。正直納得はできないが、これ以上食い下がってもあまり意味はなさそうだ。
時は金なりって言うし……? 仕方なくそう思うことにして、気持ちを切り替える。
その後の店員とのやり取り注文は彼に任せ、私はただ背筋をピッと伸ばして慣れないシチュエーションに耐える。
こういう場でリードしてもらえるのはありがたいけれど、ただ座って待っているだけでも落ち着かない。
間もなく運ばれてきたシャンパンで乾杯すると、瑛貴さんがジッと私を見つめた。
「……さて。そろそろ、亜椰の質問を受け付けようか」
そう言って彼が浮かべた余裕のある微笑みに大人の男性らしい色気を感じ、どきりと胸が鳴る。
動揺を見透かされないようシャンパンに口をつけ、ようやく巡ってきたチャンスに、まずはなにを聞こうかと思いを巡らせる。