エリート御曹司はママになった初恋妻に最愛を注ぎ続ける

「瑛貴さんは……その」
「うん?」
「昔、小さな家具店で私と一緒におままごとをしてくれた、あの男の子なんですか?」

 まず一番に確認したいのは、やっぱり彼が〝えーきくん〟であるかどうかだ。そうでないなら、あの頃の思い出話をしても仕方ない。

 彼自身が時折昔の私を知っているような発言をするから、ほとんど間違いないとは思っているけれど。

「ああ。俺も最初は気づかなかったが、きみがあのキッチンをやけに欲しがるから、もしかしてと思って」
「やっぱり……。その場ですぐに教えてくださればよかったのに」
「曖昧にしておいた方が、亜椰が俺のことで頭を一杯にしてくれると思ってね。必死できみの気を引こうと考えた結果だ」

 瑛貴さんが涼しい顔をしてとんでもないことを言う。つまり、一日中彼のことばかり考えていた私は、彼の策略にまんまとハマっていたわけだ。

 無性に悔しくてシャンパンに手を伸ばし、あっという間にグラスを空にする。間もなく、前菜の皿が運ばれてきた。

 ワインに詳しいらしい瑛貴さんが、ソムリエと相談して料理に合わせたワインを頼んでくれる。

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