エリート御曹司はママになった初恋妻に最愛を注ぎ続ける
じっくり燻製にされた魚やチーズ、カラフルな夏野菜のピクルスに白ワインがよく合い、その美味しさに少し緊張がほぐれる。
「それにしても、当時どうしてあの店に? 確かお父さんとご一緒でしたよね?」
今思えば、瑛貴さんの父も紫藤ホールディングスか関連会社の重役だったのだろう。商店街の大人たちとは一線を画した洗練された雰囲気が、現在の瑛貴さんとよく似ている。
「当時、家に処分しなければならない家具があったんだが、父は捨ててしまうことに抵抗があったんだ。だから中古品の買取を行っていて、かつその家具を大切に扱ってくれそうな店を探していた。要らないからといって簡単に捨てるのは、サスティナブルな社会づくりに貢献したいと思っている会社の理念にも反する」
「なるほど……」
確かに叔父の店には古物商許可証が掲げてあり、私が仕入れてくる家具の他、一般客が持ってきた中古品の買取と販売もしていた。
「瑛貴さんのお宅にあった家具なら、とても高級だったんでしょうね」
「……どうだったかな。子どもだったから覚えていない。俺個人としては、どこかの店に買い取ってもらうんじゃなく、全部捨てて燃やしてしまいたいと思っていたくらいだし」