エリート御曹司はママになった初恋妻に最愛を注ぎ続ける
「俺は当時、子どもながらに家族ってものに絶望していてね。だからかもしれないが、強引に誘われたきみとのままごとに、心が救われた。人形の赤ちゃんにすら愛情深く接するきみが眩しくて、今だから言うけど、涙が出そうだった」
静かに語る瑛貴さんの表情は穏やかだけれど、過去の彼になにがあったのか気になる。
私はただ、自分の中にあるイメージ通りにままごとを演じていただけ。それだけで涙が出そうになるなんて、瑛貴さんの身になにがあったの……?
「正直、今でも俺には家族というものの素晴らしさが本当の意味では分かっていないのだと思う。でも、きみとならそれを見つけられる気がする。再会してからずっと、そんな予感で胸が震えているんだ」
「瑛貴さん……」
拙い私のままごとがこんな風に彼の心を動かしていたなんて、思いもよらなかった。でも、私からのプロポーズに『きみとならいいかも』と答えた当時の彼の心理が、おぼろげながらも伝わってくる。
私があたり前だと思って演じていたおままごとの内容は、子ども時代の彼にとってあたり前じゃなかったんだ。きっと。
もしそうなら、彼の痛みに寄り添い、そばにいてあげたい。
それが本心ではあるけれど……。