エリート御曹司はママになった初恋妻に最愛を注ぎ続ける
勉強するうちに自分自身も家具や住居への興味が深まったのは確かだけれど、叔父たちが別の道へ進むなら、私も迷わずそちらへついて行くつもりだった。
「私たちへの恩返しなら、とっくに終わっているわよ。亜椰ちゃんと一緒に働けて、私も旦那も本当に幸せだった。娘と一緒にお店をやれるなんて幸運は、本当の親子だってなかなかないわ。残りの人生はもう、自分のために生きなさい」
「叔母さん……」
それを言うなら私だって、自分を娘と呼んでくれる人が両親以外にもいることがどんなに頼もしく幸せだったか。
胸の内でそう呟きつつも、こうして私を突き放すのは彼らなりの親心なのだと理解する。
ふたりと離れる寂しさで思わず瞳を潤ませると、叔母さんは優しく微笑んだ。
「もちろん、時々静岡の家に遊びに来てくれるのは大歓迎よ。美味しいお米を用意して待ってるわね」
「ありがとうございます……。楽しみにしてますね」
明るい別れにしてくれようとしている叔母さんの気持ちに応えるように、笑顔を作る。
それでもぽろぽろとこぼれてくる涙を見て叔父さんは困ったように微笑み、叔母さんは「やだ、もらい泣きしちゃうじゃない」と、ハンカチで目元を押さえて笑った。