エリート御曹司はママになった初恋妻に最愛を注ぎ続ける
デスクのそばを通った時にスマホが落ちそうな位置にあったので、遠慮がちに持って中央へ移動させる。その直後、スマホが一度短く振動し、明るくなった画面にメッセージの通知が現れる。
メッセージの冒頭と差出人が自然と目に入った。
【父 箕島さんとの見合いの件だが、来週末……】
すぐにパッと目を逸らしたが、私の脳裏にはそのメッセージの内容が鮮明に記憶された。
さっきまでの胸の高鳴りとは違い、重たくて冷たい鼓動の音が、私の胸を叩く。
瑛貴さん、お見合いをするんだ……。しかも、来週ってすぐじゃない。
相手のことまではわからないけれど、お父さんから連絡が来るくらいだから、きちんとした家柄の女性なのだろう。
彼の望むような〝家族〟を作るパートナーとして、私より適任なことは火を見るよりも明らか。瑛貴さんだって絶対にわかっているはずだ。
だとしたらこんな風に私をホテルに誘った理由は、単なる遊び。それ以外にない。
日本でお見合いをする前に、海外で最後の夜遊びをしようとでも思ったのかもしれない。
幼い頃の思い出をちらつかせ、ただの偶然を運命的な再会であるように装って……そうすれば簡単に引っかかりそうな女だって、内心ほくそ笑んでいたのかな。