エリート御曹司はママになった初恋妻に最愛を注ぎ続ける
静かに私を見下ろす瑛貴さんの目は、どこまでも真摯な色をしている。単なる遊びの相手ならもっとぞんざいに扱えばいいのに。
そうしてくれれば、初恋の幻想に踊らされていた自分を馬鹿だなって笑って、この想いをひっそりと心の奥へしまうことができるのに。
そうしない瑛貴さんが憎い。なのに大切そうに見つめられると、簡単に絆されてしまう。
「……帰りたく、ないです」
口にしてはいけないと頭ではわかっていても、こらえきれずに本音がこぼれた。
瑛貴さんはふっとやわらかな笑みを浮かべ、私の髪を撫でる。
「どうして嘘をついたんだ?」
「それは……」
瑛貴さんのスマホに届いたメッセージが脳裏をよぎり、口ごもる。
だけど直接問いただす勇気はない。
お見合いするんですか?なんて聞いたら、こうして触れてもらえなくなりそうで。
心の内でそう呟くと、自分から彼の胸にそっと抱きついた。真っ赤であろう頬を隠すように、ふわふわのバスローブに顔を埋める。
瑛貴さんの腕が背中に回され、きつく抱きしめられた。
「……わかった。緊張しすぎて逃げ出したくなったんだろ。でも大丈夫だ。怖がらせるような抱き方はしない」