エリート御曹司はママになった初恋妻に最愛を注ぎ続ける
「目を逸らすな、亜椰。これはままごとじゃない」
……瑛貴さんの、嘘つき。好きでもない遊びの相手に、ここまで思わせぶりなことを言うなんて。
心のどこかでそう思う自分がいるのに、口から出るのは甘い声と吐息ばかり。
これは一夜の過ちだと、夜が明けた後も冷静に思えるのだろうか。
何度自分に問いかけてもイエスと言える自信がなく、私は現実から逃れるように、瑛貴さんとの甘い行為に溺れていった。
早朝、喉の渇きを覚えて目を覚ました。とはいえあんまりきちんと眠れた気はしない。
ごろんと寝返りを打つと、長い睫毛を伏せて静かな寝息を立てる瑛貴さんの姿があった。
あんなに体力を使ったんだもの、疲れているよね……。
一度や二度では満足してくれなかった昨夜の彼を思うと、体の奥がジンと疼く。思わず手を伸ばして頬に触れようとしたが、寸前でパッと手を引っ込めた。
今度こそ、彼に引き留められる前に帰らなくちゃ。
物音を立てないように服を身に着け、バッグを持つ。部屋を出る前にベッドのそばに立ち、さっきと全く同じ体勢でぐっすり眠る瑛貴さんを見つめた。