エリート御曹司はママになった初恋妻に最愛を注ぎ続ける

 店の商品は閉店セールで売りつくし、からっぽになった叔父の店は五月の末に閉店。間もなく、叔父と叔母は静岡へと引っ越していった。

 三人で暮らしていたアパートだけは解約しないでくれており、新しい仕事と新居が見つかるまで、私がひとりで住まわせてもらう。

 昼前に叔父たちの引っ越しトラックを見送って、ひとりになった部屋に戻る。

 軽く掃除と片付けをすると、ますますがらんとして寂しくなった。今の私には広すぎる四人掛けのダイニングセットに座り、テーブルの上に置かれた封筒を手に取る。

 そこには、叔父のくれた現金が三十万円ほど入っていた。

『求職や物件探しの前に、少し自由を謳歌しなさい。亜椰ちゃんが好きな北欧にでも行ってくるといい』

 叔父はそう言って、遠慮する私の手に無理やり封筒を握らせた。突き返しても受け取ってもらえず、とうとうそのまま引っ越してしまった。

「これ、どうしよう……」

 貯金する。引っ越しの費用に充てる。生活費として使ってしまう。

 考えられる使い道は色々あるけれど……。

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